市原: 富士絹 細巻 アイアンウッド長傘

スポンサーリンク

ある雨の日、齢四十も過ぎてビニール傘をぶら下げているのもいかがなものかと思った。他人にそれほど興味がないので、他人が何を持っていてもいいのだが、自分のこととなると話は違ってくる。服もそこそこのものを着るようになり、靴もそこそこのものを履いている。にも関わらず、ビニール傘をぶら下げるとは何事であろうか。

そのようなことは5年前くらいから薄々感じてはいたのだが、どうにも気にいる傘がない。傘売り場でうんうんと唸りながら「あれが良いかしら、これが良いかしら」と悩んだ挙句、何も買わずに店を出る。というようなことをやっていた。いい加減、雨傘を買うかと一念発起したのである。

細く巻ける傘を

雨傘は畳んだ時の姿にこそ、価値があるものだと思っている。どこでそう刷り込まれたのかはわからないが、開いている時はどうでもいいのである。閉じて巻いた時こそ、傘は真の価値を示すものだと思っている。Amazonやらなんやらで閉じた状態の写真がないものは、閉じた時が不恰好だからであり、傘としての価値がないからだ。閉じた時が格好よければ雨に濡れても構わない。

偏屈にもほどがあると自分でも思うのだが、どうもこれを満たすものがない。あってもよさそうなのに。英国紳士の傘に対するポリシーは失われてしまったのか。それとも日本に輸入されていないだけか。

英国紳士のポリシーであればイギリス製の傘はどうか。フォックスアンブレラは細い。ニーズを満たすが、高い。あと霧雨しか降らないような国で作られた傘が日本の滝のような雨に耐えられるのか。少なくとも、亜熱帯用に作られていないことは確かだ。選択肢としては国産の方がよさそうだ。

目の色を変えて調べていると、市原というメーカーが細巻きの傘を作っていた。なんで今までこれを見つけられなかったのか。フォックスアンブレラを日本国内でアレンジした傘ということで、もはや俺が理想とする傘である。この傘の開発エピソードを読んだだけで100本くらい欲しくなる。

https://ichihara-1946.com/2021/02/12/ramudaの細巻き傘/

細さこそ正義。だが、それ以外も素晴らしい

届いて実物を見てみると、細い。驚くほど細い。傘袋に入れるとステッキのようである。色は合わせやすいようにネイビーにしたが、妖艶な光沢感がまた素晴らしい。光沢が入ると下品になりがちだが、上品な光沢感である。

そして、本体と比べると妙にがっしりしたハンドルはアイアンウッドである。厚みがあり、手に吸い付くような感覚がある。見た目ではわからず、感触だけでわかる不揃い感が手に馴染む。握った時に広がる木のぬくもりが素晴らしい。持っていて幸せな気持ちになれる。

開くと普通の傘よりも湾曲したシルエットである。開いたときはそんなに興味がないので、それくらいしか感じなかったし、今でも感想らしい感想はない。

ビニール傘と比較した様子。凛とした姿。
傘の写真難しいな!と若干イヤになりながら撮ったが、光沢感が素晴らしい
木のぬくもりというか、握ったときの感触が雨の日を楽しみにさせる
骨の湾曲が大きい
失敗した写真。背面の白壁が反射した光で透けてしまい、ネイビーがグレーになってしまった。(曇りの日に撮った)

雨具として

いちおう雨具として買ったので、雨具としても使っている。雨を防げるとしか言うことがない。当たり前のことを当たり前にできるのは、実は難しいことかもしれないが、消費者からすると心を動かされるものではない。

だから、雨が降っていない時こそが傘の価値を指し示す時だと思っている。

半年くらい使った感想

この傘の真骨頂は畳んで持ち歩いている時である。エレガントなシルエットは持っていてすごく気分がいい。冒頭で他人の持ち物に興味がないと書いたが、内心では雨の日に道ゆく人を見て「その手に持ってるの、バットですか?棍棒ですか?あ、傘か」みたいなことを思っている。

こういったちゃんとした傘は使い終わったら陰干ししないといけないので、コンビニとか一人で近所へ出かけるときは相変わらずビニール傘を使っている。そういったところは少し手間なのだが、織り込んだ上で買っているので問題ない。

計算外だったのは傘立てである。穴に1本ずつ入れるようなタイプの傘立てだと、細過ぎてイマイチちゃんと立たないのである。そうかー、それもそうだなーと思いながら、壁に立てかけるような位置になる穴を探すのである。

コメント