Gillette: New Improved Big Fellow

スポンサーリンク

久々にヤフオクを見たらGilletteのBig Fellowらしきものが即決5000円で出ていたので、ついつい落札してしまった。クーポンやらポイントやらで4000円になった。

本来であれば、銀メッキがされているはずだが、全てなくなり真鍮ホルダーの様相で、クラックが入っている。状態はそれほどよくないとはいえ、コームは全部真っ直ぐであった。箱は壊れているが、木箱なのである程度はどうにかなるだろうと判断した。メッキはいっそのこと無くなった方が気を使わなくていい。

届いたものを見てると、全体的にくすんでいるが、本体へのダメージは小さなクラックとヘッドキャップの傷くらいで、耐水ペーパーで磨けば小綺麗になりそうであった。メッキがないので躊躇なく耐水ペーパーを使える。前オーナーがクラックを修復しようとしたのか、クラック部分は接着剤か何かで修復したようだ。箱は蓋の天井部分が外れていたが、木工用ボンドで直せそう。これもサンドペーパーで綺麗にしてニスを塗ったらいい感じになりそうだが、面倒臭いのでやっていない。

今回手に入れたのは1921年発売のNew Improved時代のBig Fellowである。Big FellowシリーズはOld Type、New Improved、New Deluxe、Newの4種類だ。Newが一番新しいのでややこしい。New Deluxe以降はBig Boyとも呼ばれている。相場感としては$150〜$200くらいなので、状態が良くないとはいえ、今回の値段はお買い得だったと思う。

手持ちの中で一番古いのはイギリス製のNew No.88だったので、今回手に入れたBig Fellowが最も古い。New Improvedは初めてなので、どのようなものか楽しみにしていた。

見た目

一応、3ピースだが、パーツは上からトップキャップ、ハンドル、バレルに別れている。ベースプレートはハンドルについており、バレルを回すとトップキャップが外れる仕組みである。シングルリングは初期Gilletteのタイプで、このまどろっこしい作りはもはや化石のような代物で、現代ではコストの無駄でしかないので浪漫とか言いようがない。

真ん中がバレル

Big Fellowの名前の通り、Gilletteの中では大きい。ハンドル部分はMerkur 34Cのハンドルをそのまま下に引き伸ばしたようなイメージのロングハンドルである。持っているGilletteは全体的に小ぶりなので、この大きさは古さとは逆に新鮮に感じる。

トップキャップは穴が3つの替刃に対応している。現行ホルダーは三つ穴が基本だが、GilletteではNew Improvedが最後の三つ穴である。

ベースプレートはオープンコームで厚みがありしっかりしている。コームも太めだ。Old Typeベースプレートの厚みやコームの太さがOld Typeとの違いだろう。薄っぺらいベースプレートがあまり好きではないので、ここらへんは好感を持てるポイントだったりする。

重量感はずっしりとしていて重みは十分にある。ハンドル内部は空洞だが、バレルは金属の塊なので、実質的には真鍮製のロングハンドルと同等だ。ハンドルのしっかりとした重さに対し、ベースプレートもしっかりしているので、ヘッド部分の重量感は自然に感じる。重量のバランスは取れていおり、使っていて不自然に感じるようなことはなかった。

ローレットは未だに現行ホルダーに受け継がれているようなデザインなので、あまり言及するようなところはない。むしろ、このままオープンコームホルダーとして出ていても、何の不思議もない普遍的デザインをしている。

使い心地

使い心地はオープンコームらしいしっかりとした当たりが楽しめる。肌への当たりだけならマイルドではあるが、しっかりと肌に当たるため体感はマイルド〜ミディアムに近い。気温は高いけど風が強い冬の日みたいなイメージだ。刃が肌に密接してよく剃れる。この感覚はオープンコームならではだろう。

スムーズさも申し分なく、引っかかるような感覚は一切ない。Aristocratのような肌の上をフィギュアスケートの如く滑る感覚まではいかないが、スムーズな剃り心地と表現するには十分だと思う。スムーズさの感覚でいうと、Muhle R89やMerkur 34Cあたりに近いかと思う。

重量があるので、剃っている時の安定感もいい。ロングハンドルということもあり、アングルの範囲をコントロールしやすいが、アングルコントロールはそれほど要求されない。肌に当てた瞬間、ちょうど良いアングルで刃が肌に当たる。

替刃はWizamet Iridium Superを使ってみた。シャープな切れ味が際立ち、引っかかりや抵抗を感じずにスムーズに剃流ことができた。スムーズにも関わらず、両刃カミソリの剃れている感触は失うことはなく感触がとてもいい。剃り上がりもしっかりとBBSだったが、油断したのか、一か所だけ切っていたようだ。これはホルダーのせいではなく、単に自分が当たりの特性を把握していなかった体。ダル刃のAscoでは引っかかりはしないものの、少し抵抗を感じたが、これもBBSな剃り上がりだった。どちらかというと、シャープ刃の方が好みだ。

全体としては深剃りができて、それほど当たりが強くなく、スムーズという両刃ホルダーとしてのいいところが三拍子揃っている。No.88は深剃りというところで及第点くらいだと思ったが、New Improvedはそれをかなり上回る。

まとめ

Gillette初期のNew Improvedは今回が初めてだったが、思っていたよりもよかった。ヴィンテージのホルダー熱が再燃しそうである。特に、バレルのスリーピースであるシングルリングのシリーズは現代にはない構造なので、ロマンを感じざるを得ない。

90年前のホルダーだが、現役で活躍できるどころか、現行ホルダーと比べても優秀な部類に入る。ヴィンテージに200ドル出すか、Timelessあたりのハイエンドなステンレスホルダーに200ドルを出すかは人によって違うだろう。俺は現行ハイエンドに200ドル出すなら、ヴィンテージに200ドル出すタイプなので、今回の買い物はかなり価値のある体験だった。

次に買うならOld Typeのシングルリングにしたい。とは言うものの、Old Typeの出玉はそこそこあるが、その中から状態がいいものを探すのはなかなか難しい。コームの曲がりやクラックなしとなると、数が限られてくるし、値段も高い。どこらへんで折り合いをつけていくかというのは、ヴィンテージホルダーを選ぶ上で一番難しいところだ。

Gillette Big Fellow

8.5

使いやすさ

8.0/10

デザイン

9.0/10

快適さ

8.5/10

深剃りのしやすさ

9.5/10

価格

7.5/10

Pros

  • マイルド寄りだが刃の当たりがしっかりとしている
  • 深剃りがしやすい
  • 重量感があり安定している
  • バレルのスリーピースがロマンを感じる

Cons

  • 状態が良いものは見つけるのが難しい
  • 相場価格であれば現行ホルダーでも代替が可能

コメント