前回、Phoenix Artisan Accoutrements(以下、PAA)のスラントホルダーであるAlpha Eclipticを紹介した。それと一緒に買ったのがベークライト製のCrimson Ghostである。ベークライト製なんて買うことはないだろうと思っていたが、「軽量のホルダーも悪くはないかもしれない」と思い始め、アルミ製だけでなく、ベークライト製も試してみることにしたのだ。
PAAのベークライト製ホルダーは今のところ、Crimson Ghostの他にEl Fantasma EPICとPhantom Blueがあるが、どれも色違いなだけでホルダー自体は同じものである。Alpha Eclipticと同じようにヴィンテージ品の復刻で、元になっているのはFasanのスラントホルダーである。Fasanもベークライト製だ。ヨーロッパのスラントはベークライト製が多く、Gillette製ホルダーの模倣品がヨーロッパで量産された後、独自進化を遂げたのがベークライト製のスラントだ。
ベークライト製は初めてなので、使い勝手とかそこらへんに注目していきたい。
見た目
箱から出して触った第一印象はチープである。とても軽く、重さはわずか16gである。なんだか子供のオモチャのようで、食玩として売ってそうだ。とはいえ、造形自体はしっかりとしており、それほど不自然なところはない。金属っぽく塗装したら、それなりのホルダーに見えるだろう。
ヘッドはオープンコームのスラントで、ヘッド内で刃を捻るタイプだ。捻り加減はかなり深く、刃をセットするときにベキベキと音が鳴る。そういえば、オープンコームのスラントもこれが初めてだ。Above The TieのS2を買おうと思って、そのままにしていたが、初のオープンコームのスラントがベークライトになるとは思わなかった。
刃の露出(Blade exposure)が左右対称でないが、スラントだとたまにある。おそらく露出部分はそれほど影響はないだろう。最近使ってないのでうろ覚えだが、Merkur 37Cも左右対称ではなかった気がする。
ハンドルはショートハンドルでやや太めだ。ネジ部分はベークライトではなく、金属で出来ている。さすがに留め具は金属なようだ。
色は深めの赤でCrimson Ghostの名の通りである。透明感があり、個人的には好きな色だ。Semogue 830と合わせて使いたくなる。
使い心地
恐ろしく軽いので、金属ホルダーよりも扱いは少し難しいのだが、2〜3回使えば慣れてくる。力を入れずに剃るのが基本だが、ほんの少しだけ肌に押し付けるような気持ちで剃った方がうまく剃れる。
肌への当たりはマイルドだが、アングルコントロールはかなり厳しい。金属ホルダーであれば重みがあるので、どれくらいの力加減でハンドルを支えればいいのか感覚でわかるのだが、ベークライト製はそこらへんの勘所が一切効かないので、アングルキープが難しいのだ。
アングルさえキープできれば、スムーズでスパスパと剃れる。肌へのあたりが弱いので、剃れているのか剃れていないのか感触がよくわからないが、実際は剃れている。予想よりも剃り心地が良く、軽さに慣れさえすれば快適に使える。スラントらしくシャープに剃れるので、剃ること自体の性能は問題ない。
オープンコームだが、刃が肌にしっかりと当たっている感覚はあまりない。オープンコームらしさのようなものはあまり感じないので、「オープンコームだから」という理由で選ぶと後悔するかもしれない。ただ、これがソリッドバーだったら剃っている感触が全然なくなるのではないかと思う。
予想していたよりも剃り上がりがよく、3パスとタッチアップでBBSに仕上がった。もっと剃り残す箇所が出るかと思ったが、そうでもなかった。むしろ、仕上がりはBBSで、持った感じのチープさとのギャップに驚いた。
まとめ
初のベークライト製ということで、どのようなものか心配していたが、思ったよりも剃り上がりがよく好印象だ。使いやすさはiKon B1 SlantやATT S1のようなスラントホルダーの方が格段に上であることは確かだが、30ドル未満ということを考えれば許容範囲だろう。
16gという重量にさえ慣れれば、コストパフォーマンスは高い。買える場所は公式サイトくらいしかないので、購入のハードルが少し高いのがネックだと思うが、PAAのソープは泡立ち、香りともに良いので、そこらへんのついでに買ってもいいかもしれない。
明らかに初心者向きではないが、チャレンジしてみてもいい価格帯ではないかと思う。フェザーのポピュラーよりはずっと使いやすい。
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