このブログでイギリス製Aristocratを最初に取り上げたのがNo.58だった。表にはそんなに出さなかったが、イギリス製Aristocratによくわからない執念を燃やし、ようやく代表的なイギリス製Aristocratを全種類集めることができた。
イギリス製のAristocratについてまとめた記事は日本語では存在しないし、英語も数少ないので、簡単だが、まとめの記事でも書いてみようかと思う。
というか、自分が未だにわけがわからなくなるのだ。No.15はいったい何種類あるの?
イギリス製Aristocratの概要
Gilletteはアメリカの企業で巷のGillette製両刃カミソリはほとんどがアメリカ製である。Made in USAの刻印があり、特定の年代からは四半期ごとの製造年代を示すデートコードが記されている。
実はGilletteの両刃カミソリにはMade in USAの他に、Made in Englandと刻印された個体がある。これらはBritish Gilletteと呼ばれるイギリス製の両刃カミソリである。
製造年代を示すデートコードは刻印されておらず、細かな製造年代は一目では特定できない。特許番号(BRIT.PAT.)で大まかな年代を特定して、個体のハンドルやヘッドの形状で見極めることになる。
イギリス製のGilletteのラインナップはOld TypeからSuper Speedまでアメリカ製と変わらないが、その中でもめんどくさいのがラインナップの中でも最上位のAristocratだ。
イギリス製のAristocratは番号で呼ばれるが、番号が同じでも別の個体であったり、番号が違うのに同じ個体だったりするのだ。番号自体に深い意味を求めると混乱の元になる。
イギリス製Aristocratの違い
いろいろな番号が振られているが、大きな違いは4パターンしかない。4パターンを代表するモデルは、古い順にNo.15のオープンコーム、No.16、No.21、No.66である。
イギリス製のAristocratは数が多く見えるが、上記の4パターンのケースやプレート(メッキ)が違うだけで、モノ自体は同じである。
もし、実用性を求めて集めるのであれば、最大でも4つのみでいい。普通の感覚であれば、No.66とNo.66以外のどれか1つで十分だろう。全番号となると完全にコレクターレベルである。
全パターンを知りたければ、mr-razor.comを覗いてみるといい。きっと頭がおかしくなる。
No.15 1930年代(オープンコーム)
この年代はNo.15である必要はないが、一番出回っているのがNo.15である。それ以外の番号は完全なコレクターズアイテムなので、実用性であればNo.15が妥当なところだ。
No.15以外にも番号があるが、プレートが金だったり銀だったり、ケースが違ったりするだけでホルダー自体は変わらない。下手したらアメリカ製とも変わらない。ここまではイギリスとアメリカで同一の製品だったという話もある。
見極めは簡単で、Made in Englandの刻印があり、オープンコームであれば、手を出して間違いない。コームの歪みだけはリペアできる確率が低いので避けるべきだ。
オープンコームについてはあまり気にする必要はないが、特許番号は400.621か430.030である。
No.21 1940年代(クローズドバー・ノーノッチド)
一番わけのわからない番号であるが、特徴だけ押さえれば見極められる。
- 特許番号は430.030
- ドアを閉じた状態でセンターシャフトが飛び出していない
- ドアを開閉しても全長が変化しない
簡単に言うと1930年代のオープンコームをクローズドバーにしただけである。
これがめんどくさいのはNo.15のAustralian Setとして出回っていることが多いのだ。No.21を探すより、クローズドバーのNo.15を探した方が早いかもしれない。両刃ホルダーとしては同じものでケースが違うだけである。(No.21は革、No.15は金属のケース)
No.16 1940年代(クローズドバー・ノッチド・フラット)
eBayあたりだとNo.66をNo.16などと謳っている出品があるので、一番注意したい番号である。これもある程度の特徴があり、個体の特徴を押さえておけば特定できる。
- 特許番号は430.030
- ドアを閉じた状態でセンターバーが飛び出している
- ドアを開閉すると全長が変化する
- ベースプレートがフラット
No.16は一目見ただけだと、No.66と区別がつかないが、ベースプレートと特許番号を見れば違いを判別できる。
mr-razorを眺めるとNo.22の中に同一個体があるようだが、おそらくこれは極めてレアな個体なので出会うことはないだろう。
Badger & BladeのDE Razorフォーラムを眺めていると、No.16をベストAristocratに挙げている人が多い。
No.66 1950年代(クローズドバー・ノッチド)
一番流通しているAristocratで、ヤフオクにもたまに出ている。eBayで検索して出てくるのは、だいたいNo.66だ。そして、No.66が最後の番号付きイギリス製Aristocratである。
外見の特徴はNo.16を踏襲しているが、ベースプレートにはダイヤ型の窪みが入っており、特許番号はPatent Pendingか694.093だ。
No.22とDe Luxeが同一のホルダーで、No.22はケース違い、De Luxeはプレート違いだ。いずれにせよ、No.66の方が手に入りやすい。
No.66はアルミの個体が存在するが、アルミの方が希少性が高いので、あまりお目にかかれないだろう。重さまで表記していないので、アルミ製を確実に避けるのであれば、特許番号がPatent Pendingの個体は避けた方が無難である。
それぞれの使い心地
極端に使い心地が違うのはNo.66だ。フェザータッチといっていいほど当たりが弱くスムーズで、Aristocratの中でも随一である。その反面、他のAristocratに比べるとアングルキープが厳しめという欠点がある。ここらへんは性能のトレードオフなので仕方のない部分だ。
それ以外のフラットプレートのAristocratはそれほど差がない。厳密にはあるが、刃の当たりの強弱などは替刃で調整できるレベルなので、すべて揃える必要は特にないかと思う。
フラットプレートでオススメはNo.16だ。No.16はGilletteの中で最も重く、80gオーバーの個体である。出回っている数は少ないが、比較的状態がいいものが多い。運が良ければNo.15やNo.21よりも安く手に入る。
個人的な感覚だが、アグレッシブさでいうとNo. 21が最も強く、No.15とNo.16は同じくらい、もしくはNo.15の方が僅かに強いといったところだ。といつつ、No.16 + ハイステンレスとNo.21 + Gillette Platinumでアグレッシブさは同じくらいだと感じた。
ここらへんが「実用性ならNo.66とそれ以外をどれか1つ」と書いた理由である。
まとめ
イギリス製のAristocratについての違いは色々と議論の的になる。Aristocratを特定してほしい、というスレッドも見かけるので、見極めが難しいのだろう。というか、ケース違いの同一個体を見せられても、違いがわかるわけない。残ったヒントはグラム数くらいしかない。
各個体の剃り心地についても賛否両論があり、YMMVの世界だ。中には全部同じと言う人もいる。個人的には、今回紹介した4種類についてはどれも微妙に異なる。
実はAristocrat Jr.というミドルレンジのシリーズもあるが、今回は対象にしていない。よく知らないし、Jr.と同一のヘッドという話になると、さらにややこしくなるので、Aristocratだけに絞った。
イギリス製のAristocratは1つくらい手元にあってもいいので、見極めるための参考になればと思う。
コメント
どうも、いつも楽しく拝見させてもらってます。
今回の記事もそうですが、毎回非常に興味深い内容で参考になります。
先日、No’15の時も書き込みましたが、ようやくGilletteのVintage品を購入しました。
何も購入しようかあれこれと悩みましたが、この記事を参考にまずはイギリス製のAristocrat No’66を購入しました。
No’16を狙うかどうするか迷いましたが、記事の内容を見てマイルドなNo’66を落札し、立て続けにアメリカ製のGilletteで初代AristocratのTTO Open Combをなんとか落札できたました。エンドのリベットが無いので、Late30’sだと思います。本当はリベットがあるEarly 30’sが欲しかったのですが、かなり待って、相当探しても状態の良いものが出品されなかったので、状態が良さそうなLate30’sをしました。それでも、wet shavingを始めて色んな人のブログを読んだ中でこれは手に入れたいと思っていた初代TTOのOpen Combなので購入できて嬉しいです。相当、散財しましたが。。。
まだ、2つとも届いてはいませんが、早く剃り味堪能したいものです。
R.G.Yさん、コメントありがとうございます。
AristocratのNo.66とTTO OCですか。いいですね!
かなり散財したと思いますが、
ヴィンテージ品は縁というかタイミングなので、惹かれた時に買うのが一番いいと思いますよ。
良縁だといいですね。
ご返答ありがとうございます。
ようやくNo66もfirst TTO OCも届き、早速使ってみましたが、No66は本サイトでもご紹介内容の通りでファザータッチでマイルドなのに、しっかり剃れていて、しかも深剃りも出来ていたので驚愕しました。
はっきり言ってこの瞬間、Gilletteのaristocratという沼にはまってるしまいました。
first TTO OCはマイルド部類ではありますが、No66と同様にしっかり剃れ、深剃りも出来ますが、どちらかというとNo66の方が自分としては好みです。
そして本日、ebayをサーフィンしてたら、偶然No15を見つけてしまい、あっ、と思った瞬間にはbuy it nowをポチッとしてました。
しかも、この記事に貼られていたaristocratの詳細を載せたサイトにもありましたが、No15でも特許番号 BRI.PAT No430.030、ノッチド、クローズの状態でセンターバーが飛び出る、オープンの時に全長が短くなる、ベースプレートがフラット、重量が82g、クローズドバーというNo16の特徴と全く同じなのに収納されるボックスの内側の色が青色の個体でした。
これはNo16と同一の個体であって、収納ボックスが単純に違うとうことなのでしょうか?
No22にもNo16と同一の個体で、違いが収納ボックスのみというものもあるとのことでしたので、それと同じってことなんでしょうか?
それともNo16とは全く異なるaristocratなんですかね?
R.G.Yさん、こんにちは。
Aristocrat届いたのですね。おめでとうございます。
使用感はたまらないものがありますね。
特にNo.66は私も使ったときに驚愕しました。
eBayで購入されたAristocratはNo.16でいいと思います。
ボックスだけ本体とは別に仕入れて付属品として出品してるのがよくあるので、
ボックスは個体特定のアテにならないです。
No.16はNo.66とはまた違う剃り心地なので、楽しめると思いますよ。
コメント返信ありがとうございます。
やはりそうでしたか。御教授ありがとうございます。
No16が届くのがとても楽しみです。
この勢いでRocket HD750 MonoblocとNo58も欲しいところですが、今回購入したNo16を含め、No66、First TTO OCに加えて、主さんを参考にebayで格安で購入したあまり状態の良くないFatboyをDelta Echo Razor Worksにレストアに出しており、散々に金銭を投じてしまった為、自重してます。笑
これからも記事の内容を楽しみしております。
ちなみに今回購入できたNo66は主さんのツイートの呟きをみて、始めてヤフオクで落札しました。
貴重なら情報ありがとうございました。
R.G.Yさん、返信が遅くなり申し訳ありません。
Delta Echo Worksに出したんですね。
戻ってくるのは時間が掛かりますが、仕上がりは満足できるはずです。
Rocket HDやNo.58あたりはBritish Aristocratがあれば
出番が少なくなるように思うので、急がなくてもいいと思います。
こんにちははじめまして。
ツイッターでは時々お世話になっております。
こちらのサイトを参考にさせていただき、英国Aristocratを購入しました。
今手元にあるのはNo.66とNo.16の派生モデルと思われるNo.21or22のGOLD…だと思われます。
後者はこちらで紹介されているNo.16の特徴を備えつつ金メッキなので、mr-razorで調べると、このどちらかなーと。
ただし重さの差が微妙でどちらか判断がきっちり着かないんですよね…。
どちらもTTOの扉がノブ操作のみで完全に開にならないという欠点はありますが、価格の割に状態が良かったのでラッキーでした。
使用感もNo.22はまだ未使用なのですが、No.66は使いやすくて即お気に入りホルダになりました。
今後も貴重なシェービング情報記事を楽しみにしております。
世良田三四郎さん、こんにちは。
コメントありがとうございます。
No.21/22のゴールドですか。おもしろいものを手に入れましたね。
同じ個体で別のNoだったりするので、どちらなのかは判別難しいですね。
恐らくNo.16のメッキ違いだと思っています。
No.66はマイルドホルダーでは傑作ですね。
最近は更新が滞ってますが、これからもよろしくお願いします。